資材価格や人件費が高騰し続けるいま、企業が利益を守るうえで「物流コスト」は避けて通れない課題です。しかし、物流コストはさまざまな要素が絡み合うため、数字だけを削ろうとしても思うように効果は出ません。
本記事では、物流コストの種類を解説したうえで、削減方法を紹介します。具体策が分からずに悩まされている企業の担当者は、参考にして下さい。
物流のコストとは?
物流コストは、原材料の調達から顧客への配送までサプライチェーンを動かすために発生する総費用のことです。
日本ロジスティクスシステム協会の調査でによると、企業の売上高に対する物流コスト比率は2024年度平均5.44%と報告されており、重要な管理対象になっています。
また、物流コストは複数の要素が組み合わさって決まるため、コスト削減をただ掲げるだけでは効果は期待できません。自社の費用構成を把握・分析したうえで、適切な対策が必要です。
物流コストの内訳
費用構成を把握せずに「前年対比マイナス○%」といった数字だけを目標にすると、効果が小さい領域を削ってしまう可能性があります。まずは、物流コストにどのような内訳があるかを把握しましょう。
輸送・運送費
輸送・運送費は、製品や原材料を拠点間や顧客へ移動するために発生する費用のことです。具体的には、以下のような項目があります。
- 燃料費
- ドライバー人件費
- 車両関連費
- 保守修繕費
- 道路、施設利用料
- IT関連費
輸送・運送費は物流コストの内訳の中では最も割合が大きく、多くの企業で50~60%ほどを占めている項目です。コスト削減には、いかに輸送費を削減するかが重要なポイントです。
荷役費
荷役費(にやくひ)とは、倉庫や物流センター内で商品の受け入れ、ピッキング、梱包、出荷までに発生する作業コストを総称したものです。
主な内訳は、下記の通りです。
- 人件費(フォークリフト・ピッキング担当者の賃金、残業・深夜手当)
- 機器関連費(フォークリフト・ハンドリフト・コンベヤ・倉庫のリース料や保守料、電力)
- 付帯資材費(荷役台、包装紙、緩衝材、ラベルなど)
物流コストの割合の中でも輸送費に次いで規模が大きく、全業種平均では物流コストの約10%前後が荷役関連と推計されています。
保管費
保管費は、商品が倉庫内に滞留している期間に発生する固定費・変動費の総称です。2024 年度の日本ロジスティクスシステム協会の調査によると、輸送費 55.89%に次いで 物流コスト全体の 19.66% を占めています。
インターネットの普及によりEC市場の拡大により、どの企業も在庫を多く抱えています。結果として、ここ数年でじわじわ比率が上昇している項目です。
管理費
物流管理部門の給与、システム利用料、品質保証関連費などが該当します。物流全体を管理するのに必要なシステムの導入や、運用に関するコストが含まれています。
可視化されにくい分、無駄なコストが合っても気づきにくいのが特徴です。
包装費
段ボール・緩衝材・ラベルといった梱包に関わる資材の費用です。輸送費と連動して増減するため、過剰包装を抑えるルール作りが求められます。
また、包装作業は商品に合わせた対応が必要です。作業の手間がかかるため、人件費もかさむ傾向にあります。
物流コストの削減方法4選
続いては、物流コストの削減を実現するアプローチ方法を4選ご紹介します。自社で導入できる項目はないか、チェックしてみてください。
拠点を集約する
全国に点在する物流拠点を集約すれば、倉庫賃料・保管費・設備維持費などの固定費を大幅に圧縮できます。拠点が減ったことで輸送距離が伸び、一時的に運賃は上がりますが、荷量を集中させ積載率を高めれば輸送費全体はむしろ低下します。
また、カテゴリー別の入出荷データを一元管理できるため、需要変動に応じた在庫最適化や拠点間横持ちの合理化が進み、人件費と滞留在庫の削減にも有効です。
在庫管理を見直す
在庫数を正確に把握し可視化すれば、過剰在庫による保管料と管理工数を削減できます。管理ツールにより入出庫をリアルタイムに記録し、月次で在庫回転率を算出したうえで、適正在庫を維持しましょう。
また、商品の特性に合わせて「固定ロケーション」で作業動線を短縮するか、「フリーロケーション」で空間利用率を高めるかを選択し、レイアウトを最適化するのも有効です。無駄なスペースや倉庫そのものを削減すれば、在庫管理精度の向上と保管費の削減を同時に実現できます。
専門業者への委託する
専門業者へ委託すると、倉庫や車両、人件費などの費用が削減できます。閑散期の遊休スペースや車両維持費も発生せず、資産売却によるキャッシュ確保も期待できます。
また、物流を専門業者にアウトソーシングすると、請求ベースでコスト項目が可視化が可能です。また、随時見直しが可能になるため、ブラックボックス化を防げます。
管理ツールを導入する
物流管理ツールを導入すれば、輸送・保管・荷役などを一元管理し、検品や配車の自動化が可能です。人的コストとミスを削減できるため、配送情報や運賃分析、在庫回転率の向上を実現します。
また、デジタル化によりペーパーレス化と迅速な在庫把握が可能となり、全体の物流コストを継続的に下げられる。データを可視化できるため、継続的な改善サイクルを構築できるのも大きなメリットです。
まとめ
物流コストは、さまざまな要素がからんでいます。そのため、コスト削減を実現するためには、何にどれだけの費用が発生しているのか、現状を正確に把握することが大切です。在庫管理を見直したり管理ツールを導入したりして、自社の状況を理解したうえで、適切な施策を実施しましょう。